個人事業の相続人と跡取り
個人事業者の相続の場合には、
父親の事業を承継している子が、
その事業用資産を含め、
父親の財産のほとんどを
承継することになることが多いです。
その子は、父親の事業を継ぐということで、
父親の仕事場で働いているのですから
それは当然かもしれません。
しかし、その場合でも、
子供が他にもいるときには
問題になることがあります。
事業承継をした子が、
父親の事業資産を
全部相続できるという決まりはありません。
他の子にも、事業を継ぐ子と同じ相続権があるので、
他の子が自分の相続分を主張してくることがあります。
昔なら、長男が親の仕事や家を継ぐ為、
親の財産はすべて稼業を継いだ長男のものになり、
継がない2番目以降の子は、
親の財産を何一つもらわないで
家を出て行ったようです。
でも、現在はそんなことはなく、
親の事業を継ごうが継ぐまいが、
家の跡継ぎになろうがなるまいが、
兄弟姉妹は
みんな同じ割合で遺産を取得できるのです。
そんなことになると、
父親のやっていた事業資産を分散することにもなり、
事業規模が縮小し、
事業継続が困難になる場合もあります。
親の事業に貢献し、
親の財産を増やした子に対しては、
他の相続人よりも遺産を多くもらえる制度(寄与分)が
ありますが、
実際にこの制度の適用を受けることは
難しいような気がします。
跡取りでも、すべて相続できるとは限らない
相続が始まると、親の財産は、
いったん相続人全員のものになるので、
父親が工場をやっていた場合では、
跡取りの子であっても、その工場の利用について
他の兄弟姉妹から利用制限を受ける場合が
あるかもしれません。
その後 話し合いで、親のやっていた工場等の財産は、
兄弟姉妹で分けることになります。
そして共有の原材料で作った製品は、
誰のものになるのかという問題も起きるかもしれません。
工場を継がない他の子は、
工場を持っていても利用のしようがないので、
事業を継いだ長男に買い取ってもらうこともできますが、
長男にその資金があればいいですが、
お金がなかったら借金して
他の子から買い取ることになってしまいます。
親の事業を継いだ子ばかりいい思いをしている
と思われても、こんなこともあります。
父親がやっていた時には、
生活していくのがやっとだったのに、
長男が頑張ったことにより
工場が成長して、父親の財産が増えていると、
他の兄弟姉妹と 遺産分割でもめることもあります。
後で話が変わることもある
長男が、父親の事業を手伝い始めた時は、
他の子供たちは、
自分たちは親の財産はいらないから、
しっかりと頼むよ」
と言っていたのですが、
それから何十年も経った時、
自分の生活が苦しくなっていると、
「少しだけでいいから財産をくれ」と
権利主張をすることもあります。
工場を売ればかなりのお金になる場合には、
他の子が、自分の持ち分があるので
その工場を売ってしまおう
という気になるかもしれません。
専従者給与が低い場合
個人業者の跡継ぎの場合、
親の家に同居していることもあります。
同居していると家賃はかからない、
食費も親が出している等の理由で、
給与を少ししかもらっていない場合もあります。
その為、事業承継した子は、
貯蓄できていない場合もあります。
事業には、たくさんのお金が必要なので、
事業承継をする子は、
ある程度の事業用のお金がないと
経営が苦しくなってしまいます。
また工場は、100%跡取りのものにして、
住まいは他の子のものにしてしまうと
事業を継いで、
親と同居していた子の
住まいがなくなってしまうこともあります。
また、親の事業を継いだ後、
社会状況が急変し、
経営状態が悪くなる場合もあります。
機械設備が古くて買換える為に
多額の借金をしないと
経営できなくなる場合もあります。
個人事業を承継した子が、
気の毒に思える相続もあります。