貸店舗を借りて 洋品店を経営していた奥さん
ある種類の洋品販売店をやっていた
40代の女性がいました。
その人は、テナントを借りて
十年以上やっていました。
利益はそんなにありませんでしたが、
何とかやっていけました。
夫が大きな会社の社員だったので
生活費の心配はありません。
その人は、
何よりもその商品を売る商売が、好きだったのです。
仕入れメーカーの裏切り
その人のお店の売上が、悪くなることが起きました。
その中に、主として仕入れていたメーカーが、
自分の作った製品を販売するお店を
メーカー自身が、出店した のです。
その為、そのお店ができた時から、
顧客が減り、売上が激減してしまったそうです。
これはひどい裏切りです!
そのメーカーは
「私のお店の販売状況を 把握し、売れそうだと思ったので
出店を決めたんですよ。きっと」
と彼女は言っていました。
私は、その人のお店の
会計処理をさせていただいていましたので
度々彼女に会って
経営の相談を受けていたので知っています。
彼女は、
その仕入メーカーに
細かい販売状況を聞かれていました。
どんな商品を、どんな感じの人が買っていくとか、
どんな感じの洋服が良く売れるとか、
お客の反応や、意見など
かなり細かいデーターを求められていました。
私は、お店の企業秘密のようなことは
メーカーには言わない方がいいと
何度もいったのですが、だめでした。
「どんなことに使われるかわからないから、
自分のお客さんや、扱っている商品の事は
あまり他の人に言わない方がいいんじゃないですか」
「大手の社員は会社の命令で動く人達だから、
○○さんのことなんか考えてくれませんよ」
「自営業は、自分で自分の身を守ることも必要です」
と助言したのですけど、
私よりも、
仕入れメーカーの事を信用してしまっていました。
小売店のデーターを利用して
自社の販売に利用するのは
メーカーとしては当然のことですけど・・・
それが小売店に取って
不都合なことも起こる場合がありますので
心配していました。
個人業者は自分の身は自分で守ること
その人は後で、悲しそうに悔やんでいました。
「ああ、やっぱり教えなければよかった。
まさか、うちの販売情報を使って、
近所に出店するとは思っていなかった」
「ひどいよねえ・・・」
そのお店で、
そのメーカーの洋品を買った顧客の情報を
渡していたので
その地域の販売情報をもとに
出店販売計画を立てたようです。
そして、そのメーカーからは
売れ筋製品や新製品など
一部の商品が仕入れられなくなってしまいました。
近くにメーカー直売店が出店したので、
彼女のお店はライバル店になってしまうからです。
(そのメーカーは、季節ごとに小売業者を招いて、
製品紹介や注文を聞く催し物をするようですが、
その人は、そのも催し物に、招待されなくなったのか、
行かなくなくなったのか分かりませんが、
その洋品のメーカーとの関係が、こじれてしまいました。)
アドバイス
個人業は、近くに似たような商品を扱う
大資本のお店が出店して来た時に 弱いです。
よほど強い独自の販売力を持っていないと
勝てません。
この女性店主は
愛想がよく顧客が付いていました。
減収はしたものの、
他のメーカーの洋品を買ってくれる顧客もある程度いたので
何とかやっていけました。
しかし、
その主として販売していたメーカーからの仕入れも
できなくなってしまったので
売上は激減してしまいました。
店内の商品もかなり少なく見えました。
そして、売上が激減し、生活費も取れず、
家賃も 電気代の支払いにも
こまるようになってしまいました。
夫が会社員をやっていて生活費には困らないとはいえ、
家賃の支払いにも困ったり、
パート代も稼げなくなってしまうと
廃業を考えざるを得ません。
そんな時に、
夫が 遠方に転勤になることになりました。
その人は、夫と一緒に行くことにし、
そのお店を辞め引越していきました。
「最後はだめになっちゃったけど、
今までたのしく商売させてもらって楽しかった」
と満足そうに笑っていました。
その人は、テナントを借りる時に
何の改装もしていなかったので、
修繕費はなく、敷金も返ってきました。
もめることもなく無事に退去し、主婦に戻りました。
その後、その近くに、
さらに大型のファッションセンターができて、
そのメーカーの支店は撤退しました。